たとえばスマートフォンを買い替えるとき、どこのメーカーで、どんなデザインで、どんな機能があるか、もしくはバッテリー容量を検討することはあっても、その端末がどれくらいの年数使えるかまで考える人は少ないと思います。私なんて機械好きですから割りと飛びついちゃうほうですし、家なんかもそうですよね。
平成8年版建築白書では日本の住宅の寿命は平均で約26年とされました。たとえば私はいま37歳ですけれども、いま家を買ったらその家が平均寿命に達するのは63歳のとき。
メンテナンス次第でもっと長く住むことはもちろん可能な一方で、もし私が建てた家が平均程度の寿命だった場合は、その後に住む場所に困るわ、ローンは残るわで、大変かもしれません。
でも不思議なもので、車は多くの人が寿命を想定して買うんですね。2~3回車検を通したら買い替えを考えるとか、企業でも個人でも走行距離10万kmを基準に考えたり。
ちなみに、自動車の買い替えサイクルの平均は7.95年だそうです(2012年)。1976年のデータでは3.5年だったのが右肩上がりに長くなっています。
私が思うに、家は一生に一度の大きな買い物なので、普通は買い替えなんてちょっと考えられないし、保険をしっかり掛けるなどして担保する一方、自動車の場合は大前提として、「贅沢品」、「無駄なもの」、「趣味性の高いもの」、「ランニングコストのかかるもの」などという意識が浸透しており、リアルに買い替えを意識しやすいんじゃないかと思います。
まあごくまれに、奥さんに黙って車を買ってきちゃう旦那さんがいたり、家を一部壊してでも駐車スペースを作ってしまう人もいますが、普通は自分が車を何台持っているか分かっていて、その範囲で持っている人がほとんどだと思います。
では、スマホ(携帯電話)ではどうでしょう?
水商売の方やデジモノ専門のライターさんでもない限り、普通は1~3台程度しか持ちません。
ただ寿命はというと、聞かれたら何となく2~3年と答えは返ってきても、買うときや買い替えるときはあまり意識しない人も多いはず。
ではでは、洋服はどうでしょう?
バッグはどうですか?
テレビや冷蔵庫などの場合は「10年くらいもってもらわないと困る!」という意識があった上で購入する人も多いと思いますけど、製品に惚れてしまったりするとそういう意識も吹き飛ぶものです。
つまり、必要性を意識すればするほど寿命を意識する機会も増え、必要性を意識しないものほどコスト意識が希薄になるのではないでしょうか?
話は少し変わりますが、会計の世界では「減価償却」という言葉があります。
「そんなことくらい知ってるわ!」と思う人もいると思いますが、簡単にここで説明しておきますと、簡潔に言えば、減価償却とは、一度に費用計上せず複数年に分けて計上することです。
たとえば、メーカーが商品を作るのに1億円の機械を買いました。その年に1億円全額を経費として計上すると大赤字(あくまで単年度の損益計算の上では)です。しかし、翌年からは機械の経費が掛からないので丸々利益となります。そうすると色々と不都合が出てくるのです。
経営者から見ると、機械を購入したりする度に、今年は大赤字、その翌年は大黒字、また翌年は…という具合に、数字が暴れてしまって実態が把握しにくくなるだけでなく、機械の寿命を想定しないために無駄遣いをしてしまった挙句、機械が寿命を迎えたときに代わりの機械の費用を用意できない、というお粗末な話になりかねません。
一方で税務署にとっても不都合です。会社が利益の出ているときに大きな買い物をし、赤字になりそうなときに買ったモノを現金化するということをされると、いつまで経っても税金が取れないということになりかねませんし、会計上の不正を見つけることも困難になります。
まあそんなわけで減価償却という仕組みがあるのですが、この仕組みを円滑に活用させるために、モノによって耐用年数が法律で決められています。
木造店舗・・・24年
自動車・・・4年(4年落ちの中古車なら2年)
金属製の事務机・・・15年
冷暖房器具・・・6年
パソコン・・・4年
カーテン・・・3年
などなど(詳細は国税庁のホームページをご覧ください)。
これらが現実に即しているかどうかはともかくとして、このように法律で定めることによって各自の判断によるバラつきを抑えているわけですね。
さて、ここからが本題です。
会社の経営では税金のこともありますが、コスト意識がしっかりしているので(利益を追求することが目的ですから)、費用対効果、寿命などを考慮して、物品を購入し、単に経費として計上するだけでなく、それらを資産とみなしてバラスシートに計上します。
では一般家庭ではどうでしょうか?
基本的に会社でも減価償却するのは10万円以上の物品だけです。
家庭では10万円以上というモノは普段あまり購入しませんので、そういう意味では減価償却という観点は必要ないんですが、減価償却的に、耐用年数を意識すると、モノの買い方、持ち方というものが変わってこないでしょうか?
たとえば洋服を購入するとき。
どれくらい着ることができるでしょうか?
夏物を買ってもそれは冬には着ません。
翌年の夏には着れるでしょうか?
その次の年はどうでしょうか?
…分かりませんよね(笑)
未来のことは分かりません。
けれど、過去のことは分かります。
いま着ている服はいつ買ったでしょうか?
タンスの中の服はいつ買ったものが入っているでしょうか?
服はだいたい毎年、何着くらい買っているでしょうか?
一方で何着くらい処分しているでしょうか?
外には着て行かない、けれどホームウェアとして取っておく…。
そういう場合はどれくらいストックしていて、実際にどれくらい活用されているでしょうか?
会計上で減価償却する場合、法定耐用年数というのは結構難しいんです。
たとえばパソコンが1年以内に壊れたらメーカーが保証してくれますが、2年で使えなくなってしまうこともあるでしょう。
でも法定耐用年数は4年なんです。
そうすると、「誰が決めたんじゃ~!?」という話になるのです。
しかし、家の中のルールはその家の人が決めれば良いんです。
たとえば洋服は2年と決めてみる。
もしろん2年を過ぎたからといって即処分する必要はありません。会社でも耐用年数が過ぎて、帳簿上の残存価値が1円になっても使い続けるんですから。
でも洋服を買ってから2年過ぎた。
着ていない。
そういう場合は自分の決めたルールでは残存価値は1円。
保管し続けるには場所代というコストが掛かる、というふうに意識するとどうでしょう?
(1万円で買った洋服でも、その時点で残存価値が1円になっていると認識することが重要)
収納とはモノの支配者となることです。
支配者として、ルールを決め、守ることが大事です。
ときに杓子定規に判断しなくてはならないこともあります。
八方美人になって例外的な対処をしたり、
管理をサボると、いつか反乱が起きます。
ちょっと難しいことをだらだらと書いてしまいましたが、
モノの耐用年数、意識してみてはいかがでしょうか?
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